イチローズモルトを定価で手に入れて分かった酒屋さんの気持ち
イチローズモルトのカードシリーズ54本が揃ったセットが香港のオークションで1億円で落札されたというニュースが飛び込んできましたね*1。
近年のイチローズモルトに代表される日本国産ウイスキー人気の高まりや台湾のKAVALANの躍進などに見えるように、比較的新しいと言える蒸留所のウイスキーに相当な熱が注がれているようです。
当然、山崎などの歴史あるウイスキーがあってのことですが。
イチローズモルトに関して言えば、レギュラーであるホワイトラベル(正確にはモルト&グレーンですね)もなかなか定価に近い金額で手に入れることが難しくなっています。
そんな中、先日とある駅チカにある酒屋さんで幸運にもホワイトラベルとワインウッドリザーブを購入することができました。
店員さんとお話しをさせていただいた際の言葉にとても感銘を受けましたので紹介させてください。
いつも置いているんですかー?なんてアホな質問に対して丁寧に答えていただきました。
「基本的には入ってきたら出していますが、最近は小出しにするようにしています。
というのも、普通に出してしまうと普段からここを通る特定の人にしか行き渡らないんです。
特にお盆などの長期休暇だと、普段はここに用がないけど帰省でここを利用する人が寄ってくれるので、そういうタイミングを見計らって出しているんですよ。
なるべく色んな人に飲んでもらいたいですからね。
極端にプレミア価格を付けないのも色々な人に楽しんでもらいたいからなんです。」
店員さんの言葉にとても感銘を受け、まさに帰省で近くに寄った私も思わずホワイトラベルとワインウッドリザーブを購入しました。
純粋に商売としては誰に売っても利益は変わらないはずの酒屋さんが、なるべくいろいろな人に買ってほしいからという理由で、ただ置いていても売れる商品をわざわざ店頭に出すタイミングに気を遣っているのです。
更に、プレミア価格を付けても売れそうなのに、普段ウイスキーに高いお金を払わないようなお客さんにも楽しんで欲しいからと定価に近い値段で販売してる。
おかげ様で私のような庶民でも楽しむことができます。
本当に感謝しかありません。
このような姿勢の酒屋さんは他にもあって、上の写真一番左の白州は帰省先の地元の酒屋さんで同じようにほぼ定価で購入しました。
この酒屋さんはエロ本がたくさん置いてある不思議なお店ですが、店主曰く「こんな田舎じゃ高くしても誰も買わんよ。好きなら買って行って都会のみんなで飲んでくれ。」とのことでした。
ウイスキーが好きな人に純粋に楽しんで欲しいという、お酒をただの商品以上のモノとして扱う店主の人柄の良さを感じます。
私は地元に帰ると、実家からは少し遠しですが必ず寄るようにしているバーがあります。
そのバーでは207本のみのボトリングというTWC向けの素晴らしい秩父を頂きました。
これは7年熟成とは思えない爆発するような香りとむせかえる程のフルーティな味わいを持つ、とってもおいしいウイスキーでした。
この秩父はハーフで提供しているとのことで、マスター曰く「本当においしいからなるべく多くの人に体験して欲しい。ハーフで勘弁して」とのことでした。
しかも他にもいくつか飲みましたが、お会計は拍子抜けするほど普通でした。
マスターも「うまけりゃいいっちゃん」とニンマリ。
これも、おいしいウイスキーをたくさんの人に、というマスターの気持ちが感じられて、バーで過ごした時間の価値が倍増した気がします。
先のニュースのような近年のウイスキー熱の異常ともいえる盛り上がりに対して心配する声を上げる関係者も多いようです。
私も上の酒屋さんやマスターのように様々な人に楽しんでもらいたいという気持ちに敬意を表すとともに、自らのウイスキーとの付き合い方もあらためて見直そうと思った休暇になりました。
今回購入したウイスキーたちは大切に飲ませて頂こうと思います。